二人のおうち
 

それから二人の生活が始まった。
沙帆はバイトを始めようと考えていて、洋太はこれから勤める予定である派遣会社へ頻繁に出向くようになった。
 

 
「洋ちゃん、お仕事忙しいの?」
 

「まだそれ程忙しくないぞ。ただ年度始めだから、これから忙しくなるかもしれないなぁ……」
 

「体壊さないようにしないとね」
 

「沙帆がいるから大丈夫だろう?」
 

 
二人は会えない分だけ会話をした。
逆に互いの休日には、「干渉し過ぎない」という約束の基、あまり話をしなかった。
 

部屋にはようやく家具が馴染み始め、二人がそれぞれこの部屋に帰宅するのにも慣れてきた頃だった。
 

 
「明日入学式です!」
 

「おお……」
 

 
何だ、やけに張り切っているなと洋太は思った。
沙帆は慣れないスーツを前に緊張しているらしい。先程からウロウロとスーツの前を往復している。
 

 
「落ち着けよ。明日は直ぐに帰れるんだろう」
 

「うん、そうなんだけど……」
 

 
友達できるかなぁと眉をひそめる沙帆を、洋太は微笑ましそうに見ていた。
 

 
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