二人のおうち
 

「沙帆は何かサークルに入るの?」
 

「ううん、特別に入ろうとは考えてないの」
 

「そっか。私もバイトがしたいからちょっとなぁ……」
 

 
そんな話をしながら説明会会場を出ると、物凄い勢いで在校生達が新入生を囲んだ。
沙帆も皐月と一緒にサークル勧誘に囲まれている。
 

 
「テニスサークルだよ。入らない?」
 

「僕達は映画研究を主としてるんだけど」
 

「バンドしない?楽器ができないなら教えるよ」
 

 
沢山のサークル勧誘者は矢継ぎ早に話し始めた。新入生はなかなかその輪から抜けられない。
 

 
「あの、あたし」
 

「とりあえず見学だけでも来てよ」
 

「あ、あの、」
 

 
ぐい、と沙帆は勧誘者の一人に腕を引かれた。
その瞬間、門のそばでけたたましくクラクションを鳴らす車が現れた。
 

 
「沙帆!」
 

 
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