二人のおうち
 

その車からは、洋太が降りてきた。
 

 
「洋ちゃん!?」
 

 
沙帆が振り向くと、洋太は沙帆を輪の中から引きずり出した。
在校生達の目も沙帆に注目する。
 

 
「終わったんだろ?帰るぞ」
 

「あ、うん」
 

「車取りに行ってたからさ」
 

「そっか……。あ、皐月!ごめん、またメールする!」
 

 
沙帆は慌てて皐月に手を振り、皐月が手を振り返すのを確認してから洋太の車に乗り込んだ。
間もなく車は進み始める。
 

 
「……」
 

「洋ちゃん、ありがとう」
 

 
迎えに来てくれて、と付け足すと、洋太は運転しながら空いた左手で沙帆の頭を掻き撫でた。
 

 
「ちゃんと門の外で待ってたんだけど、お前が人に埋もれてたからなぁ」
 

「あ、あれはサークルの勧誘で」
 

「入るのか?」
 

「入らないけど……」
 

 
じゃあ問題ない、と言い放った洋太は、心なしか上機嫌に思えた。
 

 
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