不朽花
《高一 同棲準備》
君と一緒に笑ってられる。
そんだけで私は幸せだったんだ。
「え~っと……あの、すいません。引っ越しするんであの部屋引き払いたいんですけど……」
「いつ引っ越すんだい?」
「今日です」
「そうかい。……でもあの部屋の持ち主はあんただ。あたしゃ死んでもあの部屋だけは空けとくからね。家賃はいらない。あの部屋に住んでいいのはあんたとその家族だけだよ。わかったね」
「……はい。ありがとう……ございます」
「泣くんじゃないよ。こっちまでもらい泣きしちまうだろ。金の問題じゃないんだ。だからあの部屋には荷物は置きっぱなしでいい。いつでも帰っておいで。あと、これはあんたの死んだ親父さんからだよ。大事にとっときな」
「え……?そんな!頂けません!こんな大金!」
「あたしに言われてもねぇ……。あんたの親父さんが残してくれたもんなんだからあんたのもんだよ」
「じゃあ部屋代にして下さい」
「部屋代はあたしからの小遣いだ。あんたはあたしの孫みたいなもんなんだからね。それぐらいしてやったっていいだろ」
「でも……」
「わかったらさっさといってやんな。待ってんだろ、彼氏さん」
「……はい。ありがとうございます。絶対に大家さんのことは忘れません。ちょくちょく遊びにも帰させていただきます。孫として」
「……年寄りを泣かせるんじゃないよ。早くおいき」
「はい!本当にありがとうございました!」
大家さん、本当にありがとう……。
「なんだって?」
「あの部屋に住んでいいのは私とその家族だけだから空けとくって」
「そっか……。いい大家さんだな」
「うん!だから着替えしか持ってかない」
「よし、じゃあ持って来い!」
「うん!」
よし!さっさと荷造り済ませて買い物行こ!
「え~っと……これは置いてくか……」
お父さんとお母さんの写真……
「うん!置いてこ!ウジウジしないって決めたんだから!」
……バイバイ。
また来るからね。