不朽花
「えっと……。……小6のとき、両親が交通事故で死んだの。ときには優しく、ときには厳しく育ててくれた両親は、私にとって自慢の親だった。それに、『生きていれば、きっとなにかが起こるはず』っていっつも言ってた。私は、人間は花みたいなものだと思ってるの。どんなに綺麗なモデルでも、どんなにカッコイイアイドルでも、いつかは花の様に散って朽ち果ててしまう。だったら努力しても意味ないんじゃないかって。それなら友達を作ったり、恋人を作ることとかは悲しみを増やすだけで、善いことなんてないんじゃないかって思ったの。悲しみを減らすには、『本当の自分を見せない』こと。だから絶対に人に本当のことを明かさないことにしたの」
「そうか……。でもさっき言ってたことはなんだったんだ?恥ずべき人間とか……」
「それは、その私の自慢の両親が産みの親じゃないから。私の産みの親は私を捨てたの。父親は愛人を作って家を出て行った。母親は後を追うようにしてこの世を去った。だから尚更、恋とかに対する拒絶が大きいんだろうね」
「ショックじゃないのか?本当の親も自慢の親もいないなんて」
「ショックに決まってるじゃん。何度も命を絶とうと思った。でも、両親が最後に言ってくれた言葉だから……。それは多分、生きていても仕方がないと思っていた私のことを心配して言ってくれたんだと思う。だから私は、『生きていて』のメッセージだと思ってるの」
「そうだな……。咲良は強いな」
「え!?なんで!?」
「なんでって……。俺も親いねぇけどそんなに強くねぇぞ。たまにへこむし」
「へこむって……なにに?」
「たまに寂しくなんだろ」
「私……寂しくないなんて言ってないよ……?」
「でも、お前は強いよ」
「そう……かな……?」
「ああ」

照れる……。

あれ?

そういえばさっき……

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