神の使者
「悪霊になると、お前は自分の大切な者を自分の手で不幸にするんだぞ」
「……」
「それでもいいのか?」
女は校門を見つめたまま小さく呟く。
「私は母親です。子供を…娘を見守る義務があります」
だからここにいたのか。この学校に娘がいるから、ずっと見守っているんだ。死んでからも娘の事を想って。
だが零はタバコの煙を吐き出しながら嫌味な笑みを浮かべた。
「よく言う。娘を置いて勝手に自殺したのに、娘の傍から離れたくないからこんな時だけ母親面するのか?」
「おい零!いくら何でもそれはーー」
黙っていられず達也が零の腕を掴むと零は達也を突き放す。霊同士なら触れられるらしい。
「黙ってろ。本当に娘を想う母親なら、娘を置いて自殺なんかしないだろ」
「……」
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