神の使者
「悪霊になって娘を不幸にするか?死んでもまだ娘に悲しみを背負わせるか?」
女はしばらく校門を見つめ、やがて自嘲気味に笑う。
「本当ですね…。私は最低な母親だわ」
「そんな事ねえよ!」
「お前は黙ってろ」
だが達也は零の制止も聞かず女の前に出る。
「どんなに借金があっても、勝手に死んだとしても、子供にしてみればたった一人の母親だ。自分のたった一人の母親を最低なんて思うかよ!きっと娘さんは今でもあんたの事大好きだ!」
「そんなの分かるか」
「絶対そうだ!」
この世に色んな母親はいるけど、子供は何かあった時頼れるのは親しかいない。
子供には親の事情なんて分からないけど、親にだって子供の事全部分かるはずない。
「ありがとう…」
見ると、女は泣いていた。
「神の元へ逝きます」
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