神の使者
達也の言いたい事が伝わったのか、女はそう言った。悪霊になるより娘の幸せを願う事にしたのか。
零はため息を吐いてタバコの火を消す。
「叶えたい願いは無いのか?」
「そうですね…。最期に娘に謝りたいです。許してくれるか分かりませんけど…」
「叶えられるか?」
達也が心配そうに聞くと、零は右手を女に向けた。
「お前の願いを叶えよう」
すると零の右手から天使の羽のような真っ白な羽が一本現れ、それを女に飛ばした。
羽が女の体に突き刺さった瞬間、羽と共に女の体が光り輝く。
「何だ!?」
驚きの声を上げる達也を無視して零は一歩女に近付く。
「お前は今、生身の体を手に入れた。無論、娘にも姿が見えるし触れる事も出来る。だが時間は短い」
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