神の使者
達也が男を零から離そうと近付こうとしたが、それを零に視線だけで止められ、零が静かに口を開く。
「父親とこのまま別れていいのか?」
「……」
初めて男が黙った。
「父親に言いたい事があるんだろう?」
「てめぇに関係ないだろ!」
「お前の願いを叶えるまで神の元へは連れて行けない。これが俺の仕事だからな」
「そんなの知るかよ!」
零は掴んだままの男の手をゆっくりと離し、
「お前が願いを言わないのなら、勝手に叶えさせてもらう」
「あ?」
そして零は男に右手を向け呪文を唱えた。
「お前の願いを叶えよう」
右手から出て来た天使の羽が男に刺さり、男を光が包み込む。
「な、何だ!?」
男は動揺していたが、やがて光が弱まると目の前に現れた人物を見て目を丸くする。
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