神の使者
そして祐介は今だ虚ろな表情の母親の手を引きベランダへと出た。
祐介が何をするのか分からないけど、達也の中に嫌なものが渦巻く。
「止めろ!祐介!」
達也が駆け出したが遅く、祐介は自らの手で母親をベランダから地面へと突き落とす。八階のベランダから。
「祐介…」
ドシャ、という音と通行人だろうか、甲高い悲鳴が聞こえた。
悪霊と言ってもまだ子供だぞ。自分の親を殺すなんて、さっきまでの祐介が知ったらどう思う。祐介の願いは二人に仲良くなってほしい事だったのに…。
俺は何も出来なかった。
ショックで動く事も出来ない達也。そんな達也に向かって死神が鎌を振り上げた。
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