神の使者
そんな事を思いながら達也はフラフラと街を歩く。なるべく行き交う人達と当たらないように歩くが、当たってもみんな達也の体をすり抜けて行くので関係ない。
今更だけど、俺本当に死んだんだな。
こうやって普通に街を歩いているから、たまに生きてるんじゃないかと思ってしまう。
「死んだんだ…俺は…」
死んだから父さんと母さんはケンカするし、知佳の元気も無くなった。美樹にも寂しい思いをさせて、小さな子の願いも叶えてやれず悪霊になってしまった。
俺は、愛する人も子供も守れないダメな神の使者だ。
自分ばかり責める達也の頭に、フッと祐介の姿が浮かんだ。
「祐介…どうしてるんだろ」
零に移動させられたから、あの後祐介がどうなったのか分からない。でも、消える直前に見た祐介の虚ろな表情が頭から離れない。
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