神の使者
達也は心の中で美樹に「ありがとう」と呟き、美樹から離れた。
正直まだ複雑な思いだったが、俺が美樹の傍にいてやれる事は出来ない。それに翔梧なら安心して美樹を任せられる。あいつは、俺みたいに女を泣かすような男じゃない。
零がタバコを吸っていると、近付いて来る達也に気付いた。
「ありがとう、零。助かったよ」
あの時零が祐介を撃ってくれなかったら、俺も美樹も危なかった。それに、俺に生身の体を与えてくれたから美樹を守る事も出来た。
「お前の願いを叶えてなかったからな」
ぶっきらぼうに答え、零はタバコの火を消す。
「死神は?」
「ちゃんと消した」
「そっか」
「じゃあ行くか」
零が歩き出そうとしたが、それを達也が掴んで止める。
「零、もう一度だけ俺の願いを聞いてくれないか?」
「?」
疑問符を浮かべる零に、達也は最後の願いを伝えた。
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