神の使者
「俺は死んで、今は特別にみんなに会えるよう体をくれたんだ。でもまたすぐに消えてしまう」
「嫌よ!」
弾けるように母さんが叫び、達也を離すまいと強く掴む。
「もうどこにも行かないで!達也がいなかったらみんな寂しいのよ!」
「分かってる。俺だって寂しい。でも俺は死んで、もう生きていられないんだ。死には抗えないんだよ」
「嫌!絶対そんな事許さないわ!」
達也が支えられないほど母さんは強く掴んで来て、とうとう達也は壁に押し付けられた。とっくに背は追い越したのに、こんなにも力強いなんて…。
と、ずっと黙っていた父さんが母さんを達也から引き離し、抵抗する母さんの頬を思いっきり叩いた。
「父さん…」
今まで子供にも手を上げなかった父さんが初めて母さんを叩いた。
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