神の使者
「…何で…こんな事になった」
父親の視線を追うと、カーテンを閉じられたベッドがある。
カーテンがかかっているので誰が寝ているのか分からないが、ベッドの周りから二人の女性のすすり泣く声が聞こえて来る。おそらく達也の母親と知佳だろう。
「誰か大変なのか?」
だが父親は何も言わずただじっと見つめるだけだった。
家族全員が揃って病院にいるなんて、親戚の誰かが危ない状態なのだろうか。
と、廊下から慌ただしい足音が聞こえ、その足音が達也のいる病室に入って来た。入って来たのはさっき別れたばかりの美樹だ。
「美樹、お前までどうしたんだ?」
声をかけると父親が美樹に気付き近付く。
「美樹ちゃん、来てくれてありがとう」
「…達也」
「何だ?」
達也が返事をするも、美樹はこちらを一度も見ず、そして床に崩れ落ちた。
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