赤い狼 壱





「そうですね、最初は難しいって感じましたね。でも、慣れればそうでもないですよ。


髪の毛は地毛です。って、触りすぎです。」




パーマかけてるんで崩れます、となんともまぁ可愛らしい笑顔を見せる男の人の髪の毛をもっとクシャクシャに撫でる。




「ちょっ、マジで戻らなくなりますって!」




怒りながらも作業は続ける男の人に笑いが出る。


必死なのが面白い。




と、男の人とじゃれあっていると隼人が帰って来た。




「おい。早く来い!」




隼人は私を見付けるなり、私の腕を引っ張って倉庫の外に連れ出そうとする。



痛い痛い!



強く握られた腕の痛みに顔を歪ませて、さっきまで付き合ってくれていた男の人を見る。




「えっと、ありがとね!」



「…っ、はい!」




一瞬、男の人が顔を強ばらせた気がしたけれど笑顔で手を振りあった。




その間も、隼人はズルズルと私を引きずって歩く。




何よ、急に不機嫌になっちゃってさ。



だいたい、今日で引きずられて歩くの何回目と思ってんのよ。


ころころと変わる隼人の機嫌に腹を立たせて私まで不機嫌になる。




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