赤い狼 壱





「早く乗れ。」




二人とも不機嫌なまま歩いた先には、いつの間にか倉庫の前に横付けされていた車だった。でもそれがあまりにも凄くて絶句した。




艶やかな黒い輝き。


操縦できるのか、と疑うほどの長い体。




そう、それは倉庫からの照明の光を浴びてツヤツヤと光るベンツだった。




「の、乗れってこれ…。」



「早く乗れ。」




高いんじゃないの、と言おうと思った時には車の中に無理やり押し込まれた。




その時、勢い余って車の中でこけてしまった。パンツが見えなかったか心配だ。


慌ててスカートがめくれていないか確認する。あ、大丈夫だった。良かった良かった。




安心して今度はきちんと椅子に座る。本当、扱いが乱暴なんだから。


いたいけな乙女になんてことしてくれるんだ。




「出せ。」




腕を組んで目を細めている私の隣に隼人が座ってきて足を組む。



出せって何よ、出せって。




誰に言ってんのよ誰「はい。」えぇええ!?




前から声がしたことに目を見開く。え、ちょっと待ってよ。運転席!?運転席に人なんて居た!?気配なんていっこもしなかったんだけど!に、忍者かお前は!!マジか!忍者か!!




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