赤い狼 壱
運転手さんが本当に忍者かどうか確かめるために身を乗り出して確認する。
うん、確かに居た。運転手さん居た。忍者かどうかは分からなかった。
残念だ、と肩を落とす。隼人に、忍者なんて居なかったと呟いたら無視された。ガン無視だ。殺す。
「言え。」
でも、返事がなかった代わりに意味が分からない事を言い始めた。
い、家?
「家に帰るよ?」
何言ってんの?と隼人の顔を恐る恐る覗く。
「ちげぇ。稚春の家の場所、言えっつってんだ。」
馬鹿か。と呆れながら言われてムッと口をへの字に曲げる。
コイツ、さっきは可愛いとか思ったけどやっぱり全然可愛くない。
放っておいた方が無駄にムカつかないですむと今更ながらに気付いて、なんて私は馬鹿なんだと自分の頭を軽く殴る。
「運転手さん、大通りの公園までお願いします。」
運転手さんに自分で家までのルートを説明する。
でも、家まで送ってもらうなんて図々しすぎるから家の近くの公園で降ろしてもらうように言う。