赤い狼 壱
…雷太、お前大胆だな。
だが、よく聞いてくれた。
まだ俺と稚春の顔を眩しいくれぇの表情で何度も交互に見る雷太に視線を送る。
稚春を手に入れてぇ俺はもちろん雷太に、当然だ、と伝えるために口を開く。
が、
「はぁあぁぁあっ!?」
その台詞は稚春のデケェ声に先を越されて言えなかった。
「何だ。うるせぇぞ。」
言えずに呑み込んでしまった言葉を残念に思いながら顔を歪ませる。
そんな俺を戸惑いの色を見せる稚春の瞳が見つめてきた。
「だって隼人。この人さっき私が隼人の彼女なのかって…。」
稚春の人差し指の先を辿る。
すると、稚春のデケェ声に驚いたらしい雷太が目を見開いて稚春をガン見しているのが確認できた。
まぁ、無理もねぇよな。
違うって言って!と訴えてくる稚春の視線を軽くスルーする。
否定しろって?嫌だね。つーか、いい事思い付いた。
くい、と口角を上げる。お前がわりぃんだぞ、嫌がるから。
「あ?別にいいだろ。つーか、お前は俺の女だろ。」
ここに居る全員に聞こえるように、はっきりとそう言い放つ。