赤い狼 壱
よし。今度こそ言ってやった。やっと言えたぞ。
心の中で密かにガッツポーズをする。いつから俺はこんな可愛らしい奴になっちまったんだ。
「………はっ?」
首をロボットみてぇにカタカタとゆっくり動かしながら俺を横目で見てくる稚春。
こ、怖ぇ。
「隼人の女じゃないしっ!ただ勝手に隼人が此処に連れて来ただけでしょーが!何を勝手に私の彼氏面してるの!
塚、私のこの顔で隼人の彼女ってあり得ないでしょーが!」
固まったと思ったら眉を吊り上げて一気にまくし立てて怒鳴りだす稚春に驚いた。
つーかコイツ、こんなにコロコロと百面相して疲れねぇのか?その元気、俺も欲しいんだけど。俺、仏頂面だからよー。
動物が威嚇してくるみてぇに俺を威嚇してくる稚春を黙って見る。
俺に彼女って言われて嬉しくねぇのかよ。他の女だったら飛んで喜ぶっつーの。