赤い狼 壱
と、変な顔をして俺を見ていた。つーかキモい。
鼻の下を伸ばしてニヤニヤと笑っている稚春にキモい、と言うと、余計ニヤニヤし出したからもう一度キモい、と言っておいた。
「稚春、少しだけここで待ってろ。」
「うん。分かったよー。」
忘れてた、と頭を掻く。
あの人にも報告しとかねぇといけねぇな。逢いたくねぇけど。
うぜぇもんな…、と顔を引き攣らせる。でも一応、稚春の事は報告しねぇていけねぇからしょうがねぇよなぁ。
無駄に機嫌がいい稚春に疑問を抱きながら俺はある人の所へ向かう。
「…茂(しげ)さん、ちょっと話が。」
「お、珍しいな。お前が話なんてよ。」
バイクを弄っていた最中に顔についた油を親指で拭いながら俺を見てくる茂さんに苦笑いを向ける。
俺、マジで茂さん苦手だ。あの、何でも見透かしてしまいそうな目が。
黒のツナギを着た茂さんが、そこのタオル取ってくれ。と俺の横に置いてあるタオルを指さす。
それを無言で茂さんに渡して、静かに口を開いた。
「茂さん。俺、どうしても手に入れてぇもんが見付かりました。」