赤い狼 壱
俺の言葉を聞いた茂さんがタオルで汗を拭いていた手を止める。
その瞳は俺を真っ直ぐと見ていて。
「…手に入れてぇもんって?」
「《SINE》や俺らが持ってねぇもんを持ってる奴です。」
「それ、女か。」
「はい。」
俺の話を聞いた茂さんがふーん、と口元を緩ませながら俺を見てくる。何だよ、その嬉しそうな顔は。
「何スか。」
「いや?ま、頑張れよ。」
右の眉を少し上げて茂さんを見ると茂さんは薄く笑いながら手をひらひらと振る。
…?何だよ。つーか案外あっさりと認められたな。
茂さんのあっさりさに不思議に思いながら稚春の所に向かおうと踵を返すと、茂さんが隼人!と名前を呼んできた。
今日はよく名前を呼ばれるな。
顔だけを茂さんに向ける。
「なぁ、俺はお前に全て任せてんだ。だから、お前のする事に口は挟まねぇ。
だけど、けじめはつけろよ。」
「…はい、分かってます。」
「本当かよ。」
タオルを首に掛けて水の入ったペットボトルを手に取る茂さんの動作を見つめる。