赤い狼 壱
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「おい。早く来い!」
稚春の腕を引っ張って車に連れていく。
稚春の目線の先は焦げ茶色のパーマを緩くかけた男が居て。
無性に腹が立った。別に稚春がわりぃ訳じゃねぇ。ただ、俺が勝手にイラついてるだけ。
さっきの茂さんの言葉に。
稚春に向けられている、この倉庫の男達の視線に。
「えっと、ありがとね!」
「…っ、はい!」
稚春がさっきまで一緒に居た男に手を振る。
それにすらイラついて焦げ茶色の頭をした男を睨んだ。分かってる。嫉妬と八つ当たりだって事ぐれぇ。
「早く乗れ。」
イラつきがおさまらねぇまま倉庫の前に横付けされていたベンツに稚春を車の中に無理やり押し込む。
これ以上、お前を男共に見せるのはごめんだ。
「出せ。」
「はい。」
さっきの運転手に言うと、どうしたんですか?と俺の様子を窺うような顔をしてくる。
それに答えずにフイッと顔を背けると俺がイラついてる原因が分かったみてぇで、微かに笑ったのが目に入った。
なんか、恥ずい。