赤い狼 壱
それから、稚春の家に送るまでのルートを稚春が運転手に説明しているのを黙って聞いていた。
なんか俺に怒ってたみてぇだし。話し掛けずれぇし。
こういうところで駄目だな、と息をつく。情けねぇ。
稚春の家に着くまで目を瞑る。暫くすると車の動きが止まって、着いたのか。と顔を上げた。
「あ、ここです。ありがとうございました!あの、お金…。」
「いや、いいですよ。お礼をされるような事なんてしてないので。ましてや、お金をなんて。」
「いいえ!お礼をされるような事しました!本当にありがとうございました。助かりました。」
「えっと……。」
運転手が俺に助けを求めて見てくる。はー、しょうがねぇな。
「稚春、いい。」
「でも!」
「礼は別にいいが金は要らねぇ。」
「じ、じゃあキャンディーは?」
おずおずと二個のキャンディーを渡してくる稚春に思わず噴き出す。
「そんなもん、どこから出してくるんだ?」
謎だ。コイツの行動、マジで読めねぇ。クスクスと笑っていると運転手も肩を震わせていた。分かる。分かるぞ、その気持ち。