赤い狼 壱
「はいはい。お子ちゃまで悪かったわね。」
「馬ー鹿。」
「馬鹿で結構。」
「あぁ、馬鹿だ。」
開き直っている稚春とガキみたいな言い合いをする。
俺がこんなガキっぽい事すんの、レア中のレアだぞ。
「馬鹿っ!」
「馬鹿はお前だろ?」
頬を膨らませて睨んでくる稚春が可愛くて目を細めて笑う。
すると、稚春が急に自分の頬を両手で隠して家に入っていった。
両手から覗く耳が、赤い。
照れてんじゃねぇか、と頬を綻ばせる。可愛いところあんじゃねぇか。
「稚春!」
名前を呼びたくなって稚春の名前を呼ぶ。
でも顔が赤い事を気にしてんのか稚春は振り向きはしなかったが足を止めた。
「そのままでも聞けよ。明日も来い、《SINE》に。絶対だぞ。」
ゆるゆると口角を上げる。
その台詞を聞いた後、稚春が慌てて家の中に入ったのを見て笑いが溢れた。
そんなに慌てるか?普通。
笑い声を我慢することなく出しながら車に乗る。
なーんか益々気に入ったな。