赤い狼 壱
その二人のやり取りを棗は頭を抱えて聞いていた。
「なぁ、連。」
「……何だよ。」
律儀に女の子にまた返信を打ち始めた銀は、ラスボスをもう一撃で倒しそうな連の後ろ姿を見ながらニヤリと笑う。
携帯の速打ちは手元を見なくても出来ると言うだけあって銀の携帯の腕前は神並みだ。
「いや~、別に?ただ連はどうなのかなと思ってよ。」
「何がだよ。」
「稚春ちゃんの事じゃねぇかよ。お前、分かってるくせに言わせるなんて意地がわりぃな。」
その言葉を聞いた瞬間、連が操作していたプレイヤーはもう少しで倒せそうだったラスボスにやられて死んでしまった。
チッ、と舌打ちを溢してテレビの電源を切る連。その眉間には皺がくっきりと刻まれていて誰が見ても怒ってる、と分かる。
「別に、稚春は他の女とは違うって思ってるだけ。」
「へぇ?違う……ねぇ~。」
「んだよ。」
「そんなに怒らねぇでくれよ。ただ聞いてみただけだろ~がよ。」
へらへらと笑ってみせる銀に連はただ睨んで床にそのまま寝転がった。
連は面白くないと判断したのだろう。でもそれとは逆に目を閉じて寝る体勢に入った連を銀は面白そうに見つめている。