赤い狼 壱





急かしていた足の速度を落とす。



何もしなくても暑いと感じる私の体に眩しいくらいの日光が容赦なく当たる。


外でぼうっと突っ立っていても汗が吹き出そうなのに、がむしゃらに走っていた私の首から上は汗で濡れていた。





「……なんか、寂しい。」





ポツリ、と。


私の声が宙に放たれる。



その声は小さかったけれど、何故かしっかりと出されていて。


驚いた。




自分が、寂しいと思った事に。


高校に入って一人暮らしをする前も特に人とは関わりを持たない。


そういう生活を送っていた私が、まさか、"寂しい"だなんて。



まだ感情を持っていた事に驚きを隠せない。だって私は"あの日"、全てを捨てたと思ってた。



あの、最悪な日を。






あの―――日、―――す――て―を――――わす――た―――







「おっと、ごめんよ。」





ぶつかってきた男の人の声で我に帰る。



……まただ。



ガンガンと痛む頭を押さえて顔を歪める。




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