赤い狼 壱





"あの日"を思い出すと決まって頭がトンカチで殴られたみたいに痛くなる。




それは、ただ単に自分が思い出したくないという拒絶からか、

体が思い出してはいけないという警報を鳴らしているのかのどっちかだ。



でも、どっちにしろ"思い出すのは良くない"。


そう自分の体が訴えているのは確かだ。




それでも思い出そうとする私は馬鹿だと思う。でも、それでも私は―――




「いった…、」




いつの間にか止まっていた足をゆっくりと前に動かす。



とぼとぼと学校まで歩いている間も、激しい頭痛は治まらなかった。





―――――――
―――





「ハァッ、ハッ!キッツ…、」




よろよろと力尽きた体を、今の私の最大の敵と言ってもいい階段を一段一段慎重に登らせる。



全速力で走った私の体はもう限界に達していた。




「な…んでこんなに暑い日に走ら…なきゃいけないのよ…!!」




はぁ、と乱れた息を整えるための最初の息を吐き出す。




全速力の原因は誰がどう見ても私の寝坊が原因だって分かるのに、何かのせいにしたいのは

私が苛立っているからで。




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