赤い狼 壱





言うなとかは言われてないけどベラベラ喋るのは良くないと思うし…。


実に言ってもいいけど、なんだか心配かけそうだしな。なんて言おうか。少しだけ、口を閉ざして考えてみる。



昨日、帰ろうと思ってはや歩きで出口に向かってたら隼人にぶつかっちゃって《SINE》に連れて行かれたから連絡もできなかったんだよね~。





…………。無理!無理無理!絶対ムリだ!!こんなの絶対嘘だってバレる!


もっといい考えがないだろうかと考える。その結果。





「途中でお腹が痛くなったから先に返ったの…。」




一番嘘っぽい言い訳しか思い付かなかった。私、馬鹿だ。





「あぁ、だからなの?」



「え?何が?」



「顔色、さっきから悪いわよ。」




でも、そんな嘘っぽい言い訳を信じたらしい実はそう言いながら私の額に掌を当ててくる。熱がないかどうか調べてくれているみたいだ。



本当に実は優しいな。……たまに強引すぎる時もあるけど。




「大丈夫だよ。もう治ったし。でも、昨日は本当にごめんね。」



「別にいいわよ。稚春にナンパ野郎とかが引っ付いていかなかったのが確認できて安心。」





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