赤い狼 壱
「助けてくれないでしょうか。」
「無理。」
「無~理~。」
「…くそ野郎。」ボソッ
「何だって?」
「ごめんなさい。」
頼んでみたけどダメだった。マジで嫌だ。塚、実のバカ野郎。香のアホ野郎。
口に出して直接言えないから心の中でそう悪態つく。
でも、人間の粋を越えている香が
「アホ野郎……ねぇ~?」
ニヤリと笑って自分の席へと向かっていった。代わりに香の席から実の前の席へと戻ってくる女の子。
あぁ、そういうことか。席を代わってもらってたのね。
結構頭いいじゃん。香にしては。とか思う。
でも次の瞬間、そんなことを思う余裕なんてなくなってしまった。
「先生~?白兎さんが帰って来ましたよ?"サボり"から。」
鼻に唐辛子つっこむぞ。
「白兎…。」
私が香を睨む中ラッチョは目を覚まし、ゆらりと椅子から立ち上がって。
「白兎ぉおおおぉお!!!」
発狂しなさった。