赤い狼 壱
今の声…、と足を止める。
でもすぐに頭で否定した。
いや……気のせいだ。気のせい。あいつがここに居るわけないし。だいたいあの人苦手だって言ってたし。だからこんな所に来るわけないし。
「アハハー。」
だから、落ち着け、自分。
でもそんな自分への説得なんて無理だったらしい。
「聞こえねぇのか。気色わりぃ手でベタベタ触るなっつってんだよ。」
やっぱり、聞き覚えがあった。
嘘でしょ。と目を丸くする。そして慌てる。
ソイツの取り巻きは、不機嫌そうな顔をされて不機嫌そうな声を出されているにも関わらず
「キャー!!可愛いー!」
「ねぇ~何歳?これから私達と遊ばない?」
「や~ん。弟にしたぁーい!可愛い~!!」
ベタベタ触っている。ちょっと尊敬。
苦笑いを薄く顔に浮かばせながら校門まで行き、顔をチラリと見る。
ハハッ。
顔が引き攣ってますよー。すごい顔してますよー。これ以上近付いたら回し蹴りかますぞ。みたいな顔してるよ。目付き半端なく怖いよー。
やっぱり、今日のざわつきの原因は予想していた人だった。引き攣っている顔を見ると認めざるをえない。
「何やってるの――――
連。」
本当にコイツは何をしてるんだ。