赤い狼 壱





私の呆れた声をキャッチしたらしい連が怯えながらも威嚇した瞳で私を捕らえる。



そしてそのまま取り巻きの中から勢いよく飛び出てきて





「稚っ春ー!逢いたかったぜっ!!」





犬みたいに抱きついてきた。うん、可愛い。



連特有の可愛さに顔を綻ばせるけど連の取り巻きの女の子からの視線が痛くて、いきなり抱きつくな。と言いたくなる。痛い。ものすごく視線が痛い。恐ろしい。




これだから女は嫌なんだ。と顔を顰める。私だって好きで抱きつかれているわけじゃない。



これは勝手に連がしてきたものであって、私から抱きついたわけじゃない。なのに。





「なにあの女。連くんから離れなさいよ。」



「そんな地味女より私に抱きついてよ~。」





何故私だけ悪いように言われているのだろうか。



気に食わない。マジで気に食わない。




どう見てもこれは連が私に抱きついてきてるでしょ!私が背中に手ぇ回してる!?回してないでしょ!!ねぇそうでしょ!文句があるなら連に言ってよ!!!




………と、叫べたらどんなにスッキリすることか。



私は結局、心の内でしか言いたいことを言えないチキンなのだ。




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