赤い狼 壱
連が居なくなって銀がさっきよりもケタケタと盛大な笑いを溢した。
「な~にあいつムキになっちゃってんのよ。そんなにムカついたのか?」
「口切れたんだけど。まじイラつく。」
「お~、口調戻った。」
「当然だろ。連をイラつかせるためにわざとあの口調にしてたんだから。」
チッ、と舌打ちを溢しながらせんべいを相変わらずボリボリと食べる奏に銀が愉快そうに笑う。
すると、さっきまで無言でパソコンのキーボードを打っていた棗がキィーと音をたてて椅子を引きずる。
「なぁ隼人。稚春の所に行かせて良かったの?」
棗は腕を組んで雑誌を見たままの無言の隼人に疑問を投げ掛ける。
煙草を買いに行く、と連は言っていたがそれが稚春に逢いに行くための嘘だとは棗にはバレバレだった。
もちろん、隼人にも。
「あぁ、連か。いいだろ、行かせときゃ。」
雑誌から視線を外し棗にフッ、と自信ありげに笑う隼人。
そんな隼人を見て棗は「お前怖い。」眉を歪める。
と、
「…どういう事?俺、分かんないんだけど。」
会話の意味が全然分かっていないらしい奏が、せんべいをバリバリと食べながら棗と隼人に問いかけた。