赤い狼 壱
「は、離しなさいよぉぉぉぉ!!」
私の叫びなんて無視してスタスタ歩く赤髪男に、また叫びながら手足をバタバタとして暴れる。
でもやっぱり男はそんな抵抗を聞かずにそのまま足を進めている。
な、なんて強情な奴!
あまりのマイペースさにわなわなと怒りで震える手をギュッと握りしめる。
ムカつくムカつくムカつくムカつく。
ぶつぶつと心の中で文句を言いながら、まだ諦めずにジタバタと暴れ続けた。
でも―――駄目だった。
いくら叩いても蹴っても、叫んでも降ろしてくれない赤髪男に降参するしかない。
諦めよう。なんかあったら逃げればいいんだし。
もうほぼ、開き直ったと言ってもいいくらいの諦めに達した私は、赤髪男に解放される希望を完全に捨てた。
でもこの後、
やっぱり何がなんでも此処で降ろしてもらえば良かった。
と後悔する事を知っていたらまだ抵抗していたかもしれない。
だけど、そんな事が事前に分かってるわけがない私はそこで諦めてしまったんだ。