赤い狼 壱
………………。
え、ちょっと待ってください、なんですか、今の。
頬っぺたにチュッって。柔らかいものがムニュって。当たったんですけどなんですかね?
頬をスリスリ、手の甲で擦る。そしてそのまま茂さんの顔を十秒ぐらい見つめて、口をパクパクさせ、その後にスウッ、と大きく息を吸い込んだ。
そして、
「うえぇええぇえぇ!?」
「だよなー、叫ぶと思ったー!」
大きな声で叫んだ。と同時に茂さんも叫んだ。
いや、そんな呑気にハハッ☆みたいな効果音つきそうな声で笑ってる場合じゃないと思うんですがそれは私の気のせいですかね?
てか、なんですかね。このまだ私の体に巻き付いている腕は。え、待って待って。力強くなってませんか、さっきより私の体に回してる力増してませんか。え?気のせい?気のせいなら嬉しいんだけどなー。嬉しいなー。気のせいなら嬉しいなー。ふんふふん、ふふふふん♪
素晴らしい現実逃避をする。でも茂さんはそのまま放ってはおいてくれなかった。
さっきから徐々に強まっていた腕の力をもっと強めてきて。
「クッキーのお礼な。旨かった。また今度作ってくれよな。」
グイッと私の体をこれでもかというぐらいに茂さんの体に引き寄せられて、私の耳元で低い声で囁いて耳を軽く、
「………っ、」
噛んだ。
思わず体がビクッと反応し、途端に顔が熱くなる。
なんてこったい、ここの人間は。スキンシップが激しすぎる。
「しししし、茂さん!?」
「はいはい?」
「ど、どんたっちみー!」
「はいはい。」
「なっ、笑いごとじゃないです!!」
「はいはい。」
「キー!!( ゚Д゚)」
「ブッサイク。」
稚春はダメージ137をくらった。