赤い狼 壱
「ちょっとシバいてくる。そこで待ってろ。」
え。
ちょっと待ってよ、と小さく声を漏らすけれどソファーから立ち上がる隼人には小さすぎて耳には届いてない。
ちょちょちょ、マジでそれは勘弁して。
勝手に連れてきて会話なしで、終いには私に真っ黒オーラを醸し出してるこの黒髪くんと一緒の部屋に居れと!?
無理無理無理っ!!
どうシバいてやろうか、と心なしか楽しそうに呟く隼人の背中に手を伸ばす。
「ちょっ!はや―――」
――バタンッ――
閉められた。
私の叫びを無視して隼人は部屋を出ていった。ムカつく。
「意味分かんない。」
長く深いため息を口から吐いて、肩をガックリと落としながら黒髪くんに目を向ける。
黒髪くんは未だテレビゲームに夢中。
「………。」
暇だから黒髪くんの観察をする事にした。
どす黒いオーラはまだ漂ってるけど見るだけなら大丈夫。
自分で自分を説得して暫く、黒髪くんの背中を見つめる。
「……じろじろ見んな。」
すると、私の視線に気付いたらしい黒髪くんがゲームを中断してこっちを見てきた。