赤い狼 壱
「邪魔だ。どけ。」
さっきの馬鹿な声ではなく、低い声が私の耳に入ってきた。
そして、その後すぐに
「く、来るなぁ!!来るな来るなぁ!!…っ、うっ…」
「ガハッ!」
「ま、待て!見逃してくれ!ギャアァアアっ!!」
何か恐ろしい物に怯えたような声と、何かが折れたり踏み潰されたりする酷い音、人が倒れる音が耳に入ってきた。
何が起こってるのか、とか分からずそのまま耳と目をギュッと塞ぐ。
耳を塞いだ私の両手は無様にもガタガタと大きく震えていた。
「おい、終わったぞ。」
それから暫くして騒がしかった音が聞こえなくなり、さっき聞いた低い声が私の耳に響いた。
そっと耳から手を外し、目を開ける。
「大丈夫か?」
そこで私の目に入ってきたのは――――
「赤色――…。」
燃えるように真っ赤な色の髪をした男の人だった。