赤い狼 壱
「―――!」
ん?今一瞬、何か聞こえた気が…。何だ?
こっちにもこいつの仲間が居たのか?
大勢居たって勝てねぇよ、そう思いながら声のした方を見ると三人の男に囲まれている女が居た。
黒髪の腰まである長い髪。綺麗な二重。顔は綺麗系だ。
でもいつもだったら素通りする。嫌がってたら別だが。
でもあの女はどう見たって平然と立っている。だから助けてやる事なんてしなくていいだろう。
喧嘩を売ってきた奴は全員倒したし帰るか、と《SINE》への道へと足を運ぶ。
でも、何でかあの女が気になった。
頭から離れねぇ。
「んだよ。」
イラついた。
頭でチラチラと浮かぶ黒髪。それが"アイツ"を思い出させる。俺を捨てた、"アイツ"を。
せっかく忘れてたのに、と拳を握りしめる。
あの女は"アイツ"とは違う、と思いたくて引き戻した。
きっとあの女の顔を一目見たら違うと納得できるだろう。
この時はそんな思いで軽い気持ちで、自分の嫌なものを消したくて戻っただけだった。