赤い狼 壱
「おい、どけ。」
明らかに呂律が回ってねぇ男の肩を掴む。コイツ、薬やってんじゃねぇか。俺の街でやるとはいい度胸じゃねぇか。
イラつく。
イライラは最高潮に達した。何で今日はこんなにイラつくんだ。
パンチとも言えねぇほどの拳を避けて鳩尾(みぞおち)に拳を食らわす。
俺を誰だと思ってんだ。ふざけんなよ。
さっき殴った奴の返り血が俺の頬を掠める。
助けを求めてくる最後の一人にスゲェ腹が立った。
それで助けてやるとでも?ハッ、甘ぇな。
飛び蹴りを食らわして顔を床に叩きつける。二人目に倒した奴がまだ意識があったみてぇで俺の足を掴んでくる。
触んじゃねぇ。
ガッ!
ソイツの頭を鷲掴みして持ち上げる。
「誰の足、触ってんだよ。」
「うっ、ゲホゲホッ」
腹に蹴りを入れる。最後は頭突きをしてやった。
静かになった辺りを呆気なかったな、と見回す。
その途中、さっき頭から消えなかった女が目と耳を固く閉じて肩を震わしていた。
ガタガタと耳への音を遮る手が大きく震えている。
コイツ、さっきは平気そうな顔してたくせに。変な女だ。