赤い狼 壱
「おい、隼人。どうした?お前がボーとしてるのなんて珍しいね。」
――ハッ――
「いや……何でもねぇ。」
「そうか?つーか、今回も派手にやってくれたなぁ。」
棗が下に転がっている奴らを見て深く息を吐く。
「ハハッ、わりぃな。いつも片付けさせてよ。」
「そう思ってんなら少しはその暴走を止めてくれ。」
「いや。止めようとは思ってんだけど、いつの間にかこんな事になってっから俺もどう止めればいいのか分かんねぇんだよ。」
「…お前、重症じゃない?」
「あぁ。だから、今回も後片付け頼むぞ。」
「…隼人、直す気ないだろ。」
棗がもう一度、深いため息をついて《SINE》の奴らに電話をかける。
「あ、俺。あ゙?オレオレ詐欺じゃない。あぁ、そうなんだ。隼人がまたやっちゃってさ。今から―――」
棗の声をぼんやりと聞く。
俺の頭の中ではさっき助けた女の事がグルグルと回っている。
―――あの女、また逢えねぇかな。
俺はこの時、思ってもなかった。
この時逢った女が俺の運命を大きく変える事になるなんて。
ましてや、この俺があの女に恋するなんて。