赤い狼 壱
「あ゙ー!イラつく!」
――ガンッ――
傍にあった壁を力いっぱいに殴る。
「おい隼人さんよ~止めろよな。壁に穴が開くだろ~がよ。可哀想じゃねぇかよ。」
「うるせぇ!ほっとけ。」
あーマジでイラつく。
抑えようのねぇイラつきに頭をわしわしと掻き乱す。
どう抑えろっていうんだよ、このイラつき。
「隼人、そんなにイラつくんだったらカラオケでも行ったらどうだ?」
パソコンをしながら俺をチラリと見て提案してくる棗。
お前はいつもパソコンの画面ばっかり見て飽きねぇのか。
「あ゙?」
「だからカラオケ行って少しはストレス発散してくれば?って言ってんだよ。」
お前が居ると集中できない、と困ったように眉毛を下げる棗の顔を見る。
カラオケか……カラオケは以外と好きだしな。行ってみるか。
いつもなら棗の提案に素直に頷かない俺は何故だか今日、棗の提案したカラオケに行く気になった。
何でかは未だに分かんねぇけど今、思うのはこの時行く気になって良かった、という事だけ。
じゃねぇと、俺は稚春と逢えなかったからな。