赤い狼 壱





そそくさと部屋を出る準備をすませる。




ガシャーンッ!!




それと同時に凄い音が部屋に響いた。ほらな、やっぱりそうなっただろ。




「もう一度言ってみろ。」



「…うわぁ。棗ってばご立腹?助けて~隼人~。」



「行ってくる。」




棗に胸ぐらを掴まれながら助けを求めてくる奏を無視して部屋を出る。



さっきのはお前らがわりぃからしょうがねぇよ。




「行ってらっしゃーい。」




奏に向けていた顔とは逆の満面の笑みで俺を見送る棗。




――バタンッ――





「奏、もう一度言ってみろっつってんだよ。あ゙?」



「ぎゃぁあぁああぁっ!!隼人の鬼ーー!棗の悪魔ーー!」



「あ゙ぁ?」




閉めたドア越しからは奏の叫び声が聞こえる。調子乗ってた分、棗にたんまりと怒られろ。




「お~、凄いじゃねぇの。棗がキレるところなんて滅多に見れやしねぇよ。


ここはビデオカメラで棗のキレシーンを録画しないといけねぇんじゃねぇのか?


よし、俺はビデオカメラ取ってくるからもっと怒らせておけよ、奏ちゃんよ~。」




そうだな。銀は一回海に沈めてみたらどうだ?ベタに東京湾とかいいんじゃねぇ?



顎に手を当てながら階段を降りる。アイツは死んでも生き返ってきそうだからな。




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