赤い狼 壱
頭から被った珈琲を腕で拭いながらぶつかった拍子に倒れたらしい女を見る。
……あ゙?
コイツ、あん時の女じゃねぇか。
俺を見ての最初の感想が髪の色だった女を記憶から引っ張り出す。
…間違いねぇ。コイツだ。このギラギラな瞳。
目を凝らして見つめる。するとどうやら向こうも気付いたみてぇで目を見開いた。目ぇデケェな、おい。
「マジ有り得ないんですけど。」
俺を見てすぐに顔を歪めたと思ったら、女は長いため息をついて頭を抱えた。
んだそれ。イラつく。
「は?」
せっかく落ち着いていたイラつきがまた浮上してきて顔を顰める。
すると女が急に焦ったような表情をみせた。どう考えても遅ぇだろ。
「お前、さっき何て言った?」
できるだけ笑顔で質問する。怖がられちゃあいけねぇからな。
まぁ現に口元が限界っぽいけどな。作り笑いなんて久しぶりにやったぜ。
「いいえ!私、何も言ってませんっ!私の顔は忘れてください!!すいませんでしたっ!」
ヒク攣る口元を頑張って上に上げていると女は俺の言葉を聞いて慌てて謝ってくる。
だからもう遅ぇって。