赤い狼 壱





その場から去ろうとする女の手をとっさに掴む。



逃がすわけにはいかねぇよ。




「な、何でしょうか…?」




掴まれた腕を顔を引き攣らせながら俺を見てくる女の目をジッと見つめる。




あぁ、俺コイツのこの目が見たかったんだよな。今日のイライラの原因の一つかもしれねぇ、と揺れる瞳を見つめる。



相変わらずギラギラと輝いてやがる。




「何でしょうか?じゃねぇよ。お前のせいで俺、びしょ濡れなんだけど。」




にこりと笑いながら女の腕を掴んでいる手に力を入れる。


でも、そんな俺の手を振りほどこうとして女は腕を縦に振る。



結構、度胸あんじゃねぇか。女にしては珍しい。



ふーん、と右の口角をゆるゆると上げる。



強気な女は嫌いじゃねぇ。むしろ、好みだ。





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