赤い狼 壱
いい奴に逢っちまったかもしれねぇ、と少し気分がよくなる。
なのにもっと強気な態度をとってきたから顔を綻ばせそうになった。
「手、離して!あと、ぶつかったのは私だけのせいじゃないと思うんですけど!
あんたも、よそ見してたじゃんっ!」
ヤベェ…俺好み。
真っ直ぐ見つめてくる目。
強がりな口調。
…決まりだ。
「ちょっと!離して!」
やっと見つけた。
ぎゅうっと女の手にさっきよりももっと力を込める。
でもそんな俺の手を一生懸命振り払おうとしている。どう考えても女の力じゃ無理だろ。
それにこの俺だぞ?
ゆらゆらと横に揺れる俺と女の手を見ながら余裕の表情を見せる。
とけるもんならといてみろ。