赤い狼 壱
「おい。おい。着いたぞ。」
「んん~?」
まだ眠そうに目を擦りながら顔を上げる女の顔を、今まで見つめていたにも関わらず見つめる。
やっぱり可愛い。でも起きてる方がやっぱり可愛いな。
周りをキョロキョロと見渡す女に笑いを溢れそうになって我慢する。
ハムスターみてぇ。
とっさに家で飼ってるジョンという名前のハムスターを思い出す。やっぱりジョンにそっくりだ。
「ここ…どこ?」
「お前、重たい。」
「なっっ!!失礼なっ!」
「本当の事だろ。」
やっと目が覚めたのかポツリと言葉を溢す女を、降ろしながら愚痴を聞こえるように呟くと煩く吠えられた。
元気だ。寝起きなくせに叫ぶ元気あるってある意味感心する。俺は寝起きがわりぃ方だからな。
「で、何なのあんた!何者っ!?」
「ギャンギャンうるせぇな。つーか俺、言ってなかったか?」
「名前なんて言ってない。」
「そうだったっか?まぁいい。俺は大狼隼人。お前は?」
うるせぇ、なんて本当は思ってねぇくせに普通にコイツと目を合わせて話せねぇから顔を顰める。
俺カッコわりぃ、マジで。