赤い狼 壱
それを見た稚春は何故だか急に目を反らした。
顔が心なしか赤く見えるのは勘違いじゃねぇと思う。だって、耳まで真っ赤だ。
「そういえば…私、あんたの事なんて呼べばいいの?
…隼人君?隼人?赤髪男っ?隼人様!?ど、どれっ!?」
話を変えようとしたのか急に焦りながら喋りだした稚春に微かに口を緩める。
下手くそなんだよ、話の反らし方。
「お前、本当にうるせぇ。呼び方は、隼人でいい。…隼人様も捨てがたいけどな。
あと…、赤髪男はリストに入れなくていい。」
「えー!?赤髪男、一番いい呼び方だと思ったのに…。」
「…いや、良くないだろ。」
間髪入れずにそう呟く。
眉を垂れさせて本気でショックを受けている稚春がスゲェ可愛く思えた。
でも、さっきまでショックを受けてたと思ったら上から目線でものを言われて眉を寄せる。
コイツの思考回路が分かんねぇ。
「何で上からなんだ。もういい。お前、さっさと中に入れ。」
ずるずると稚春の腕を引っ張りながら《SINE》へと歩く。
その間ずっと、稚春がもつれそうになる足をなんとか持ちこたえながら俺の後を着いてくる。
それが少し、柄にもなく嬉しかったりした。