赤い狼 壱
まだ抵抗を見せる稚春に少しため息を漏らす。
元気ありすぎだ。もう少し静かにできねぇのか。
呆れながらも握っている腕をほんの少しだけ、ぎゅっと握る。
でも、離せられねぇんだよな。普通の女だったらとっくの前に離してんだけどな。
………なんか今回は離したくねぇって思ってる俺がいんだよ。だから、どんだけ抵抗したって離してやらねぇ。俺のもんにするまで。
わくわく、と。
俺の気持ちが踊る。
久しぶりのこの感覚に驚いた。俺って感情とかってあったんだな。
後ろから投げ掛けられる吐息混じりの声を背中越しに聞く。
なぁ、俺コイツがたまらなく欲しいんだけど。
誰に、とかじゃねぇけど心の中でそう呟く。
今日から楽しくなりそうだ、と稚春には聞こえないように呟いて《SINE》の扉をゆっくりと開けた。
隼人side~end~