赤い狼 壱





「でも、集まり悪い連中でも総長に呼ばれたらどんな日でも集まるんだよ。ここに。」




棗が指でとんとん、と机を軽く叩く。


軽快な音が部屋に響いた。




へぇ~。そうなんだ。じゃあ今日も呼ばれたって事か。……で、呼び出した張本人は?



視線だけをさ迷わせる。総長なんて居ないんだけど。




「でもまだ総長、来てないね。その人って時間にルーズな奴なんだね。」




居ないなんて呼び出しされた人が可哀想だ。


ふう、と息を短く吐き出す。それを見た銀が苦笑いを溢して口を開いた。




「おいおい。まだ分かんねぇのかよ。


この部屋に居て役割決まってねぇの隼人だけだろーがよ。じゃあ必然的に隼人が総長になんじゃねぇか。」



「あ、そっか!……ん?って、えっ?




隼人が、総長!?」




まさかのカミングアウトに思わず叫ぶ。



隼人が総長!?


まーたまた、冗談とか言っちゃって~。




私を騙そうなんて百年早いわよ!と手をひらひらさせる。



でも、隼人が総長だっていうのは事実らしい。


皆が否定をしてこない。





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