赤い狼 壱
迷った末、ぐっと拳を握りしめた。よし、やるっきゃない。行くのよ、稚春!
「勇気は私にも「おい。」」
ガッツポーズをして自分を奮い立たせていると握った拳を大きな手に掴まれた。
しかも、さっきまで騒がしかった不良さん達が急に静かになっている。
も、もしかして私の後ろに居る人ってここの頭さんですか。
私が部屋を出る前にあっかんべーした相手ですか。
わ、私はできればこのまま後ろを振り返らないで帰りたいんですけど。それは無理ですかね?
その場で動けずに固まる。
――グイッ――
すると肩を掴まれて後ろに思いきり引っ張られた。
ぎゃあぁああ!!後ろは向きたくないって言ったのにー!
ぎゅうっっ目を瞑る。あぁ、きっと怒られる。
隼人に怒られる覚悟はしていた。だから、驚いた。
「俺が送る。」
そんな事を言ってきた隼人に。