赤い狼 壱
バイクの話を聞いて怖じ気づく。
いいのか、私みたいな凡人がこの倉庫に入ってて。
急に不安になってきて隼人の手をぎゅうっと掴む。
ツナギを着た男の人たちが隼人に気付いて頭を下げた。しかもわざわざ、立ち上がって。
こう見てみると本当に隼人って総長なんだな、って思う。
皆に慕われてる。
それに、さっきは不良ちゃん達に圧倒されて気付かなかったけど、隼人はちゃんと話し掛けてきた人とかにも無視せずに話をしてる。
相槌もしっかり返してるし、挨拶ももちろん、あぁ。しか言わないけど返してる。
隣に立って見ていれば分かる。隼人って無口で、無愛想に見えるけどちゃんと《SINE》を大切にしてる。
仲間を、暖かい目で見てる。
隼人って実は優しいのかもしれない。ただ、不器用なだけで。
チラッと、今も話し掛けてきた男の人と話をしてる隼人を見上げる。
無愛想だけど、時々優しい表情を見せる隼人に少し口が綻んだ。
なんだ。隼人って優しいんじゃん。
「…キモい。」
フフフ、と笑う私に隼人が眉間に皺を寄せる。